研究概要 |
本研究は,環境、経済、社会を統合的にとらえて持続可能な発展を目指す試として,2000以降の都市関連EU施策をミクロとマクロの両面からる2年にわたる研究で,初年度は研究全体に関わる文献など資料調査に加えて,ミクロすなわち自治体レベルでイタリアとオーストリアの事例を,現地調査などを行い分析した。 その結果,2000年まで同政策をリードレてきた欧州委地域政策総局と環境総局がその存在感を薄め,エネルギー運輸総局が都市環境への関与を強める方向にあることが明らかになった。この背景には,競争力強化、エネルギー安全保障、地球温暖化対策を優先施策に掲げるようになったために,エネルギー運輸総局の重要性が増したことがある。他方,1990年代サステイナブルシティの動きは,欧州レベルの複数の自治体ネットワークに継承されていた。 当年度では,これら自治体ネットワークのうちCO2削減を目標に掲げる気候同盟に着目した。活発な活動の見られるオーストリアの事務局と進自治体シュタインバッハなどをヒヤリング調査した結果,CO2削減を中核に据えながら,かつ生活の豊かさを実感できる持続可能な経済社会のしくみへ転換する視点を持っているところが大きな成果を上げていることが明確になった。 また,イタリア自治体では,EUの旧URBANがきっかけとなり,歴史的な建造環境再生を中核に社会、経済、環境を統合してサステイナブルシティを実現する動きを発展させて国レベルの事業とし2000年以降も継続的に展開されている。 わが国ではCO2削減の数値目標達成に即効性のある方策が選択されがちな今,欧州が地球温暖化対策で抜きん出ている基盤には,自治体単位の環境、経済、社会を統合した十年以上にわたる継続的な取組みがあった。この点,わが国自治体にとって有用と思われる示唆を得た。
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