1.事例からの定式化 (1)事例収集 計画過程で当初計画が変更になった事例として、岡山県勝央町基本計画以降の経過、米子市崎津団地計画の経緯、豊田市市町村合併による計画変更過程を担当者からヒヤリング調査を行い、情報を整理した。また、「建築のあり方研究会」で参加者からの設計問題事例の情報を収集した。 (2)典型シナリオの構成 過去に収集した事例から、a)計画設計組織内の調整問題、b)建築設計における安全判断問題、c)都市計画における予測誤り問題の3つの典型シナリオを作成した。 2.計画妥当性の論理学的定式化 (1)計画評価の非論理性 計画案の評価が非論理的になされる可能性の問題を社会心理学の知見から定式化し、数値計算例により、評価が人間関係や所属組織に依存して決まる可能性を示した。 (2)計画案の整合性検証問題 計画案を、仮定された事実、主張などの命題集合と見なした場合に、計画内容内に相互に矛盾が存在する可能性があり、このような内部矛盾がある場合、これを検出する判定アルゴリズムを作った。 (3)計画シナリオの論理学的定式化 前記の典型シナリオb)を論理学的推論問題(シャッター・パラドクス)として定式化した。つまり、建築内に使用する個々の防火シャッターは機能障害が生じる確率が一定値以下で工業製品として安全と判定されており、設計者は、安全なシャッターなので、このシャッターを何枚も使って構成される安全区画も安全と判断しているが、この判断では、確率論的に危険な場合が存在している。この安全判断の推論プロセスの論理学的問題を定式化し、この問題を回避する方法を示した。
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