研究概要 |
アレグザンダー自身の著作のほぼ全てと,学術論文のうち日本国内において入手可能なもの全てを,彼自身による目録に基づいて収集を終えた. また,彼の理論の2つの柱であるパタン・ランゲージと生成プロセスの発想の源流が数学的構造としてのモデルと数学的な証明のプロセスに求められることを彼の初期の著作,具体的には1960年代の文献をもとに検証した.その結果,数学的構造としては代数的構造であるlatticeを用い,その構造上でモデル論的意味論に従って彼のデザイン理論の意味論を構成していることを確認した. さらに,『形の合成に関するノート』のなかに「いうまでもなく数学のあり方は抽象的であり,建築のあり方は具体的で人間的である.けれども,その違いは本質的なものではない.それがどんなものであれ,そのあり方の鍵握る質はそのを構成のなかにあるのであり,このような仕方でその構成について考えるとき,我々はそれを形式と呼ぶのである.数学的な形式に対する人間の感覚は,証明のプロセスに対するその人の感覚からのみ発展する.」等の記述から、彼の生成プロセスに関する思想は直観主義の創始者であるブラウアーの思想(数学は精神により直接的に把握される心的な構成(証明)を扱う)と一致し,アレグザンダーの生成プロセスと構成的数学における証明概念との明らかな対応を見出すことができた。
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