研究概要 |
本年度は,3年間にわたる研究成果の総括を行った.具体的には以下の2点についてまとめ,発表した. 1.アレグザンダーの理論における証明論的側面(プロセス)とモデル論的側面(構造)をその意味論と統語論としてまとめ,アレグザンダーの理論の形式的側面の全貌を明らかにし,成果を国際会議にて発表した.数学的モデル論とパタン・ランゲージの対応については,アレグザンダーのデザイン問題の定義における「形」,「コンテクスト」および「適合」について,これらが数学における形式主義を基盤として語られていることを示し,「形」とは形式的表現のことであり,「コンテクスト」はその形式的表現に解釈を与える集合上の構造であり,「適合性」とは真理値のこととして捉えることができることを明らかにした.現在,この内容を学会誌への投稿原稿を作成中である. 2.また,アレグザンダーの理論における意味論と統語論を検証する上で明らかになった彼の理論のもう一つの側面,すなわち,認知心理学の影響を検証した.彼の「形」の理論が,実はブルーナーやゲシュタルト心理学を始めとする認知心理学の影響を受けており,形式的側面をその背後から支えるような役割を果していることを明らかにし,学会誌に発表した.ブルーナーからの影響は仮説・検証による理論構築手法や検証実験を遂行するための実験技術,表象作用の3つの発達過程の枠組みなどであり,ゲシュタルト心理学からの影響は部分の知覚から全体の知覚へということ,知覚における同型性の原理,良い形に関するプレグナンツの法則などが挙げられた.
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