本研究では、近年再び高齢化の進行に伴う過疎化現象の兆しが顕著になりつつある雑賀崎集落の変容について、空地化、空家化による集落空洞化の兆候および日常生活の相互扶助の実態から、頭在的な現象と潜在的な集落環境変容圧力の相互関係について分析し、中心市街地に隣接する村落の、課題について研究した。 調査の結果、日常の相互依存関係が重層的に存在し、見かけ上安定的なコミュニティが形成されていることが明らかにされた。しかし住民自身による意識と実態的な将来予測の変化には大きな差があり、日常生活における心的な認識が、過去からの慣性力として引き継がれていることを示している。また住領域の拡散、高齢化、車の使用、半郊外型量販店への依存など時代的変遷に伴い、子の市街地への流出傾向を示し、一親等間の世帯分離が趨勢となっている。その結果将来における集落の空洞化が懸念される。 一方社会資本への重点的な再編において、コンパクトシティ化が叫ばれる昨今、その周辺に立地する農山漁村集落は、コンパクトヴィレッジとして、長く持続してきたコミュニティや居住環境の長所を生かしつつ、都市機能を享受しうる条件を備えているとも考えられる。 これは今後の低密度化、空地化の進行に伴い、居住環境の新しい側面を浮き上がらせる可能性を秘めているとも考えるべきであり、新たな市街地近郊集落像の模索が望まれている。
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