本研究では、都市開発又は再開発の投資行動がミクロ経済学の投資理論に基づくものとして、その開発投資行動を定式化し、都市計画規制、市場、税制等の諸要因が開発投資決定に与える影響をトータル的に捉えることを試みる。また、これまでの開発に関する実績データを解析し、各要因の影響度を定量的に把握した上で、持続的な都市更新及び土地利用を誘導していくために、いかなる要因をどの方向、かつどの程度で調整すれば良いかの具体的な示唆を与えることを目的とする。 本年度は、九州地方都市を対象に時系列の開発実績データを収集した。開発の実績データは、主に都市計画基礎調査と建築確認申請に加え、地価、建築工事費、税率、国勢調査、事業所統計、不動産価額等は公式統計データを収集した。 また、対象都市の数値地図をベースマップとして、すべてのデータをGIS(地理情報システム)に移植し、互いにリンクさせることによって、一体的なデータベースを作成した。 さらに都市開発及び再開発の投資行動は、基本的にミクロ経済学の投資理論に基づくものである。つまり、競争市場では建物の賃貸及び分譲の価格が市場の需給関係で決定されると同時に、企業或いは個人は、地価、税率、工事費等のコスト、又は用途地域の制限等を勘案し、市場で決められている価格で「商品」を提供しながら、長期的累積利潤が最大となるように開発投資を行う。開発投資を行うか否かは、将来にわたる累積利潤によって判断されるという考え方の基で、開発投資行動の定式化を試み、基本モデルを構築した。
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