本研究では、都市開発又は再開発の投資行動がミクロ経済学の投資理論に基づくものとして、その開発投資行動を定式化し、都市計画規制、市場、税制等の諸要因が開発投資決定に与える影響をトータル的に捉えることを試みる。また、これまでの開発に関する実績データを解析し、各要因の影響度を定量的に把握した上で、持続的な都市更新及び土地利用を誘導していくために、いかなる要因をどの方向、かつどの程度で調整すれば良いかの具体的な示唆を与えることを目的とする。 本年度は、昨年度に構築したデータベース及び開発投資行動の定式化モデルを適用し、パラメータの推計、各投資決定要因の感度分析を行い、その影響度を明らかにしたともに、今後の都市再開発投資を促進するための方策について考察した。主な成果として以下の3点をあげられる。 1)都市再開発投資行動は、長期利潤最大化の法則に基づいて「消費者行動」、「企業の短期投資行動」、「企業の長期投資行動」を定式化することに成功した。 2)九州各都市のパネルデータを用いて、モデルのパラメータの推定を行った。モデル決定係数の値が高く、統計的に有意な結果が得られた。 3)投資決定要因影響度の分析では、建設コストにおける地価、容積率、各種税率の影響度合を検証した結果、地価と税率においては、税率のほうが地価の変動より感度は高く影響力が大きいことがわかった。また、建設コストに与える容積率の影響は、その上昇時と低下時において異なる傾向があることがわかった。
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