わが国の都市計画においては地方分権、市民参加の重要性が増しており、市町村都市計画審議会の役割が重要になっている。一方、同審議会には多くの問題が指摘されていることも事実である。本年度は、1) 昨年度に実施した都市計画審議会のまちづくりの総合性への対応可能性に関する研究を精緻化し論文化すると共に、2) 昨年度着手した今後の都市計画審議会の位置づけや役割改善の可能性に関する自由記述に対しテキストマイニング手法を用いた分析を深化させること、および3)デンマークの都市計画における専門家・有識者の参加を調査することの3点について実施した。1) にっいては、制度的な制約はあるものの、都市政策の総合性を議論する場所としては都市計画審議会の可能性が高いことを発表した。2) については、都計審の専門的議論の場・市民参加機会の場としての方向性、都計審ではなく公聴会やパブリックコメントなどの直接的市民参加の拡大の必要性等が重視されていることを明らかにした。この際、有識者等が指摘する都計審の「司法的機関化」「計画立案機能付加」「都計審の市民討議の場(アリーナ・フォーラム)化」等の方向性は重視されていないことが明らかとなった。また、3) については、デンマークは2007年に行政機構を改革し、27のAmt(郡)を14のRegion(地方)に、271のKommune(基礎自治体)を98に再編したが、本年度は特にRegionに着目した。 Regionは都市・地域計画に関する実質的権限を保有しないながらもRegional Development Planのみを策定する。興味深いのは、同計画策定にRegional Economic DevelopmentForum(有識者会議)が関与することである。デンマークが地方行政において「審議会」的組織を初めて導入したとも言える。
|