「違法・地域許容型」建築物群とは、竣工後に建物が利用される過程おいて、違法状態となるものの、当該地域において、それらの違法状態が多数存在し、地域において許容されている状態をいう。その背景に現在の建築規制が想定する土地利用と、現実の土地利用のズレが存在するためである。 初年度である平成19年度では、大阪船場地区でなお制度的に残っている建築線と、現実の土地利用で違法もしくはグレー状態にあるものを、現地踏査を行なうことによりデータ化を行なった。その結果、当初の予想通り、多くの違法状態が観察されたが、特に商業系用途が主な街区にあっては、住民ならびに利用者にも受け入れられるであろう土地利用の具体的事例を豊富に収集することができた。 さらに11月末には八尾市における建売住宅団地(最近のものから10数年経過したものをサンプリング)を対象に、「前面空地についての利用実態と意識」についてのアンケート調査を実施した。入居後に居住者が前庭(自らの敷地内)部分に、どのような物を置くようになったか、それらについて、できれば見せたくないものは何か、居住者同土のルールづくりへの関心は何か、などについて具体的に明らかにすることができた。とりわけ、ガレージ屋根の増設や公道へのグリーンのあふれ出し現象の中に、本研究の課題である違法状態とその評価の問題が顕著にでており、2年度目に十分解析を行なう。
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