平成19年度の主たる研究実績は、建築計画的に重要であると考えられる日本の戦後公共集合住宅を列挙したことである。列挙作業は、まだ完全なものであるとは言えないので、識者等の意見も取り入れながら、平成20年度も継続する予定である。 それら集合住宅の中には、すでに取り壊されて存在しないものも含まれており、本研究の意義は大きいものと実感するところである。すなわち、集合住宅において建築計画的に竣工当初意図された(提案された)住まい方を改めて記録することは、極めて重要であると考えられるのであり、住まい方を次代に伝える、すなわち住まい方を継承することこそが、集合住宅を次代に伝えてゆくことになると考えうるのである。 また、平成19年度には、実際にふたつの場所の集合住宅の現状を見学する機会を持つことができた。ひとつは、茨城県水戸市内いくつかの茨城県営住宅であり。もうひとつは、香川県坂出駅前の坂出人工土地と呼ばれる集合住宅である。いずれも、戦後の公共集合住宅史上重要なものであるが、茨城県営住宅が現在も良好に使われているのに対して坂出人工土地は、老朽化が進みその存続が危ういのではないかと思われた。坂出市に対して電話で問い合わせたところ、現在のところは取り壊し等の予定はないそうだが今後の状況は不測である。 おそらくは、坂出人工土地と同じような状況にある公共集合住宅は少なくないものと考えられるのであり、本研究において、ひとつでも多クリニックの集合住宅の実態を明らかにしたいと考えているところである。
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