本年度に行った主たる作業は、次の2点である。 (1)新建築誌(発行:新建築社)の昭和23年から昭和63年までの各号に目を通し、掲載された集合住宅および集合住宅に関する記事の資料収集を行った。その数は記事総数309件、作品数101件であったが、昭和40年以前に建設されたものは、ほとんど現存していないことが明らかになった。 (2)本研究の研究代表者である三上は、UR都市機構西日本支社の半世紀にわたる活動の記録誌編集に関わる中で、建築計画学的な見地から重要であると思われるものに言及し、監修者として「集住体・半世紀の挑戦」(UR都市機構西日本支社集住体研究会編)を共著という形でまとめた。それは、「Aまち」「B住棟」「C住戸」「D技術」「E再生」の5つの大項目のもとに、都合121項目が列挙され、項目ごとに解説文と事例が収められている記録誌であり、三上は解説文全てをリライトしたものである。この記録誌自体が本研究の重要な成果でもあるが、「Aまち」「B住棟」「C住戸」で挙げられている項目は、「住まい方を継承する」という視点から建築計画学的に重要であると考えるべきものである。とくに次の項目が重要であると考えられる。 「Aまち」:NSペア配置、囲み型配置とコモン、準接地型住宅、タウンハウス 「B住棟」:スキップフロア型住棟、スターハウスとボックス型住棟、高層スターハウスC型住棟、コーポラティブハウス、コレクティブハウス 「C住戸」:メゾネットとクロスメゾネット、可変型住宅、二戸一の可能な住宅フレックス住宅・フリールーム住宅、αルーム・スペアルーム、リビングアクセス (2)で抽出した項目に照らし合わせて、(1)の現存するもののうち、住まい方を記述するべき集合住宅に言及したものである。
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