本研究は、ユネスコによる国際条約・憲章・勧告といった国際協力による文化財保護をおこなうためのシステムに注目し、国際社会における文化財概念に目本が果たしてきた役割と、相互に与えあった影響について明らかにするものである。 第2年度である平成20年度は、前年度開始した調査を継続し、ユネスコによる景観保護についての初めての国際勧告「風光の美と特製の保護に関する勧告」(1962年採択)とユネスコの文化財保護に関する初めての国際条約である「武力紛争の際の文化財保護のための条約」(1954年採択)に特に注目して研究をおこなった。景観保護については、日本の名勝保護制度の関係に注目し、景観保護への国際的な理解と大正8年制定の史蹟名勝天然紀念物保存法にはじまる日本の名勝保護理解との関係を明らかにした。その結果、日本の名勝制度は、文学や絵画といった芸術に深く関係する景観、また宗教、伝説に関係する景観といった、今日の文化的景観概念に通じる文化財概念を持つものであり、当時の国際社会にとって先進的事例と認識されていたことが明らかになり、その成果を日本建築学会に発表した。研究に際しては、東京文化財研究所所蔵関野克資料、博物館明治村所蔵資料、国際機関であるユネスコ、イコモス所蔵資料等を資料として用い、研究への理解を得たうえで関係者へのヒアリングをおこなった。さらに昭和50年の文化財保護法改正により導入された伝統的建造物群の保存制度についても国際条約や勧告からの影響について調査分析をおこなった。日本の文化財保護制度と国際憲章で議論された文化財概念の相違についての比較のため、関連する各国の文化財概念についても調査をすすめた
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