平成20年度は、地方中核都市における都市祭礼と都市空間構造との関係性を中心に考察することを目的とした。具体的には、昨年度の予備調査で検討を加えた福岡県博多区の「祇園山笠」を主な対象として取り上げ、その祭礼空間の空間的特徴について、飾山・舁山を配置した各流の祭礼拠点の実測調査を実施した。「祇園山笠」については、すでに2003年度の現地調査によって「東流」を中心として、祭礼空間・巡行路・祭礼拠点(飾山の設置場所・詰所空間・街路や建築空間の設えなど)を記録したが、今回は、その後の変化を把握することが可能であった。また飾山の設置された祭礼拠点については、全域に広げて調査することで、祭礼拠点の相違点など、各流の特徴が明らかになるとともに、現代の都市空間を舞台として、演出される祭礼拠点の多様なあり方を確認することができた。また、山梨県富士吉田市では「吉田の火祭り」に関連して御師住宅と町並について補足調査を実施した。 次に、これらの調査データをもとに、平成19年度に実施した東京の都市祭礼=神田祭の祭礼拠点との比較検討を行った。その結果、氏子住民の減少や町の再開発など、ともに変化の激しい都心部の祭礼であるが、その変化を巧みに利用しながら祭礼拠点が維持されている状況が本研究によって判明した。さらに、近代における祭礼空間の変容を比較すると、伝統的な祭礼システムを維持し続けた博多(吉田)に対して、東京では祭礼システムそのものが近代化に対応しながら柔軟に変化することで、近代都市空間の新たな地域コミュニティ(町会など)の形成に、大きな役割を果たしたことも明らかとなった。
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