パトリック・ゲデス(1854~1932)のエジンバラにおける活動拠点・「観察塔」における実践活動(1900年から1915年に限る)の内容を示す資料として、以下を収集した。 仮面劇(1912年、エジンバラでの上演作品に関して)については、(1)ゲデスによる脚本とその立案過程及び草稿、(2)演出・出演で協力・参加した人々(特に女性)とゲデスの間の書簡、仮面劇についてのパンフレット、ポスター、新聞記事、(3)舞台のための諸場面のスケッチ、写真などである。 また、ゲデスの活動のもう一つの拠点であったラムゼイガーデンについての資料とそれが掲載された古地図を、スコットランド国立図書館およびエジンバラの古地図専門店で収集した。ゲデスの活動の拠点には、「観察塔」のみならず、エジンバラ大学およびゲデスとその家族・弟子たちが住んだラムゼイガーデンがある。特に、ロイヤルマイル(エジンバラ旧市街のメイン・ストリート)の始点であるエジンバラ城に最も近接したラムゼイガーデン(現在はエジンバラ旧市街屈指の高級住宅街)は、ゲデスがエジンバラで活動をはじめた頃はスラムの一角を形成していた。 今年度の文献調査で、ラムゼイガーデンは、17世紀に詩人が建設したヴィラが核となり、画家であった息子の代に増築されたものであることが分かった。ラムゼイガーデンの成立過程は、近代にスラム化した中世の街並において、特にゲデスがラムゼイガーデンを自らの居住の場所としたことと関係があるのではないかと考える。ゲデスは、環境と生活の関係を精神性も含めて追求すると共に、文学を愛し詩人でもあったからである。そこで、今年度は、その成立過程を示す古地図を中心に収集をおこなった。
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