2009年度に行った調査研究の成果の概要は、以下のとおりである。 (1)アイヌの建築文化変遷史の解明 平成8年度以降継続してきたアイヌの建築・住居(チセ)に関する研究によって得られた研究成果・蓄積を基礎に、その成果を再整理し、さらに近代以降の民俗事例についても調査を進め、擦文文化からアイヌ文化への移行過程および近代以降の建築文化の変化も含めて、研究成果をまとめ、日本学術振興会研究成果公開促進費の助成を受け「アイヌの建築文化再考-近世絵画と発掘跡からみたチセの原像-」として学術図書を刊行し、研究成果の公表をおこなった。 (2)和人の建築活動の実態解明 おもに文書資料から、近世期の和人による建築活動に関わる史料の収集整理を進め、和人の建築活動を示す史料として有力と考えられる巻子本(絵巻物)の所在確認調査を実施した。今後はその内容調査を進めていく予定である。 (3)アイヌ・和人の建築活動と本州文化・周辺国との関係史 本州立化については、草戸千軒遺跡(福山)、一乗谷朝倉家遺跡(福井)、海外の事例としては、アイヌとの比較の視点から、中国黒竜江省の黒竜江周辺に居住する赫哲族(ホジェン)の建築文化との比較検討をおこなった。今後、それらの地域の比較検討を進め関係史としての分析を進める。
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