研究概要 |
Fe-0.1C-3Mn合金を8テスラの磁場中で熱処理し、強磁場が変態速度に及ぼす効果を核生成、成長に分けて考察した。その結果、強磁場はフェライトの核生成と成長の双方を促進するが、その効果は成長モードによって異なる。炭素の拡散で律速される速い成長モードでは促進効果はより顕著に起こり、Mnの拡散で律速される遅い成長モードでは促進の度合いは小さい。また、Mnを2〜3%添加すると、磁場中ではフェライト相を不安定にする効果があることが計算により判明した。これは、Mnがキュリー点を下げ、鉄の磁気モーメントを下げることによる。従って、遅い成長モードで変態促進効果が低減するのは、この領域ではMnの拡散によって成長が律速されることの他にも、フェライトを不安定にする効果もあると考えられる。また、速い成長と遅い成長の境界は8テスラの磁場で〜20℃上昇することが判明した。Fe-0.1C-1.5Si-3Mn合金についても磁場中で熱処理を行い、同様な促進効果を観察した。変態挙動には、オーステナイト化温度の影響が大きいので、次年度は引き続き、オーステナイト化温度の影響と磁場による変態の促進効果を検討する。また、速い成長と遅い成長における合金元素(Si,Mn)の分配挙動を調べるために、加工熱処理を行った。予備的な組織観察では、遅い成長の領域で、非常に微細なフェライトが生成し、合金元素の分配が起こっていると予想される。これについては次年度にSTEM-EDXによる分析を行う。
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