研究概要 |
原子炉・核融合炉材料内では,放射線の照射によって局所的に高濃度のはじき出し欠陥や不純物原子が生成し,それらが拡散・相互作用することによってミクロ構造・ミクロ組成が変化,さらには,材料機能が劣化する.本研究の目的は,階層構造をもち,かつ,複雑な系である材料の中で起こる,時間的にも空間的にもエネルギー的もマルチスケールな現象-照射損傷プロセス-を予測するためのモデルを考案し,原子炉・核融合炉材料の設計,選択,保全等に寄与することである. 本年度は,従来から申請者が分子動力学法やモンテカルロ法等を使って構築してきた金属中のヘリウムバブル核生成・成長に関する新しいモデルを,照射材料内の欠陥蓄積過程評価を行う計算機シミュレーションコード(反応速度論+モンテカルロ法)に導入するための検討を行い,ほぼモデル導入に際しての問題点を明らかにすることができた.これをもとに,継続となる次年度では,具体的な照射条件での蓄積プロセスシミュレーションを行い,実験データとの比較からモデルの妥当性検証を行う.また,系の複雑性をより現実に近づけるための試みとして,2元系材料のボイド核生成・成長に関するモデル化も行った.実際にはSiC材料を例にし,ボイド内の空孔組成について注目したところ,ボイドの成長速度等について,とくにボイドのエネルギー論(ボイドの熱的安定性に対する空孔組成の影響)が重要であることが明らかになった.これは,従来の純金属内のヘリウムバブルの核生成の場合とは異なるものであり,こうした研究から,逆に,純金属内のヘリウムバブル形成に対するヘリウムの効果がうかびあがってきた.さらなる検討を重ね,次年度末には,明確なまとめを行う.
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