電子顕微鏡において、試料の立体的情報を得る手法である電子線トモグラフィーでは、試料を±60度以上傾斜して多数の像を撮影する必要がある。超高圧電顕では1シリーズ撮影するには従来およそ3〜5時間を要している。この時間を短縮するために19年度において、視野位置の補正やフォーカスのずれを極めて小さくできる高精度傾斜装置と、撮影時間を大幅に短縮できる一眼デジタルカメラおよびハイビジョンカメラによる撮影法を開発した。 本年度は、上記撮像方法が予想以上に好結果が得られたので、撮影効率をより向上するために、傾斜装置と連動して撮影シーケンスが最適なタイミングで自動的に進む制御ソフトウエアーを開発した。 これは、撮影する傾斜角度の範囲、傾斜角度のステップ及び各動作間の待ち時間を決めると自動で1シリーズの撮影が進行するもので、手動で操作を行う場合に比べて無駄な時間がなくなるため極めて効率のよい撮影ができた。この場合のカメラはX線環境下の電子顕微鏡下部に取り付けるため、約30m離れた操作室から上記の制御及びカメラの操作ができるコントローラーを作成した。これには撮影画像を操作室に即座に転送する機能も含んでいる。これとは別に、試料が傾斜するにつれ実効厚さが変化するので、ビームの透過能が変わり像の明るさが変化するという問題がある。この対策として明るさの調整などの自動化機能を組み込んだ これらの結果、、従来1シリーズ121枚の撮影に数時間要していたものが、一眼デジタルカメラを用いた場合で3〜20分程度、ハイビジョンカメラの場合は最速で約75秒で撮影ができるようになり、当初目標の1/100の時間短縮を達成することができた。
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