能動的機能を有する光学素子開発を視野に入れ、近赤外レーザー集光加熱によるガラス表面への結晶ラインパターン形成技術にはさらなる高度化が必要とされている。本研究では、非線形光学機能を有する析出結晶近傍の局所応力制御による機能向上と制御に関する技術開発を目的として、以下の基礎的研究および技術開発を実施した。 1.レーザー集光照射異質相パターニングシステムの開発 近赤外レーザー(波長808nm)を使用したレーザー集光照射光学系を研究初年度に導入したが、本年度においては、レーザー出力および試料ステージの自動制御により任意パターンを形成するシステム開発を実施した。システムの動作、操作性等の確認のために、銀ステインを塗布したガラス表面に対する局所加熱実験を行った。レーザー集光領域における銀イオン拡散とコロイド形成による微視的着色を確認し、本システムが結晶化以外の異質相パターニングにも適用できることを示した。また、ステージ動作や制御操作性についての性能を確認した。 2.ビスマスホウ酸塩系の結晶化挙動調査 非線形光学結晶化ガラスのモデル系として、希土類イオン含有ビスマスホウ酸塩系を選択し、加熱光源波長808nmに対する吸収帯を有するDy^<3+>含有ガラスを作製し結晶化挙動を調査した。Dy^<3+>含有系では、研究報告のあるSm^<3+>含有系と比較して、(1)結晶化に対する不安定性、(2)低い吸収係数で特徴づけられ、レーザー集光点の結晶化温度到達には、Dy^<3+>を含有させた安定なガラス組成開発が不可欠であった。材料科学的な解決として、第3成分の添加による結晶化挙動を調査した結果、少量の酸化亜鉛を添加した安定なガラスにおいて、目的結晶相BiBO_3の析出優位性を確認した。最適化組成で結晶ライン形成と応力誘起を試みたが、現時点で良好なパターン形成には至っていない。レーザー光源の強度および品質改善が不可欠であると判断した。
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