本研究は、ニオブ酸リチウムナトリウムカリウム(LNKN)固溶体セラミックスの優れた圧電特性およびその温度特性の起源を探り、さらに優れた新材料創出に繋げることを目的とした。そこで、最終年度は前年度の成果を踏まえ、(1)微構造の均質化に向けたLNKN合成プロセスのファイン化、(2)LNKNの各種圧電物性測定、(3)局所構造歪みと圧電特性との因果関係の明確化、に取り組んだ。具体的には、これまで検討を重ねてきた原料選別、調合、粉砕、焼結のプロセスにおいて、その条件などを確定し、均質合成化を達成した。さらに、前年度に合成したLNKNセラミックス、単結晶、薄膜の誘電および圧電物性の評価を行った。特に、各種試験片加工したサンプルを作製して、同材料では未発表となっている多数の圧電基礎データおよびその温度依存性を取得した。その後、局所構造歪みと圧電特性との因果関係の明確化するために、これまで得たデータの比較評価を実施した結果、イオン半径の小さなLiイオンを6mol%含んだLNKNセラミックスは、ペロブスカイト結晶構造中のNbO6八面体ユニット内部に強い異方性応力を残留させて自発分極方位を特定化するため、優れた圧電特性が発揮可能であること、さらにその強い残留応力によって、温度上昇に対する原子間結合強度の低下を緩和する働きを有することを明らかにした。 すなわち、LNKNセラミックスの優れた圧電物性起源に内部構造歪みが直接関わっており、内部構造歪みの導入は、新しい鉛フリー材料の物性制御設計として活かせるとの結論に達した。
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