高密度マイクロ波プラズマCVD法によって得られるn型ナノダイヤモンド薄膜の電気伝導特性を向上させるために、成膜後、雰囲気制御下において、光照射処理、あるいは高温アニール処理を行うことによって、アモルファス相のsp^3からsp^2への結合状態変化を促進した。処理後の試料を、ラマン分光法、X線光電子分光法、van der Pauw法、ホール効果測定等によって調べた結果、sp^2結合の割合は、最大70-80%に達することが分かった。その際、電子濃度は10^<20>-10^<21>cm^<-3>に達するが、一方でsp^2結合の結晶性と結晶サイズの増加により、半導体特性の劣化(準金属的伝導への遷移、電子移動度の減少等)が生じることが分かった。 sp^2への結合状態変化を促進した試料について、粒界のアモルファス相の炭素密度、sp^2/sp^3比等を調べるために、透過電子顕微鏡観察と電子エネルギー損失分光法を行った。その結果、sp^2化によって、炭素密度が減少していることが分かった 電子デバイスへの応用を意図して、n型ナノダイヤモンド薄膜/p型シリコンヘテロ構造ダイオードを作製し、電流-電圧特性を評価した。室温で最大10^3の高い整流比が得られたが、逆バイアス時におけるリーク電流値は比較的大きく、実用に際して電力損失の原因となることが分かった。リーク電流は、主として膜中のπ欠陥準位と、膜-シリコン界面のさまざまな欠陥準位に起因するものと考えられる。一方、高温でも整流性を保つことから、高温電子デバイスとしての可能性が得られた。
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