研究概要 |
本研究では、溶融ガラスの結晶化プロセスを利用した、La-Ca-Si-Al-O系の新しい配向型固体電解質作製法を開発した。通常の固相法により多結晶セラミックス電解質を合成する代わりに、意図的に目的組成からずらした原料配合比に設計することによって試料を液相に移行させ、溶融急冷法によるガラスをまず作製した。溶融雰囲気は1873K、空気中とし、急冷後1073Kからの徐冷によってガラスを作製した。このガラスを種々の条件下で結晶化させたところ、非常に均質で、かつc軸面が優先的に成長した結晶化ガラスの作製が行える条件を見出した。この手法を、導電性に異方性を有するアパタイト型固体電解質に適用することで、電気化学デバイス向けの高度配向型固体電解質が作製でき、配向操作を行わない場合に比べて大幅な物性の向上が得られることを明らかとした。 中でも本年度は溶融ガラスの結晶化時に材料にかかる酸素濃度勾配を制御することで望みの方向性をもたせた配向性酸化物結晶を析出できるという興味深い現象を見出し(嶺重ら,特願2009-185885)、これにより最も配向度の高い電解質を作製できることが分かった。以上から酸素化学ポテンシャル勾配を外場として利用する新規概念による固体電解質作製プロセスが可能となることを示した。得られたガラスは酸素のイオン導電特性を示し、1073Kにおいて9.0×10^<-5>S・cm^<-1>という導電率、起電力法から求めたイオン輸率が0.89という特性を有していた。さらに厚さ0.4mmの結晶化ガラス電解質を用い、正負両極に白金を用いたセルを作製し、燃料電池として作動することも確認した。以上から、酸素ポテンシャル勾配という外場を利用して溶融ガラスを結晶化させることで配向を誘起し、導電パスが一方向に優先的に揃った固体電解質を作製するプロセスが確立された。
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