単一モード10kW級ファイバレーザーを実現するための障壁となっているホストガラスのレーザー破壊現象に関して、ガラスのミクロな構造と破壊現象の相関を明らかにし、その抑制法を開発することを目的に研究を進めている。本年度の成果を以下に記す。 (1)ESR測定により、フォトダークニングで生成する欠陥種およびその濃度を明らかにした。また、P共添加およびAl共添加ガラスを比較して、P共添加ガラスの方が欠陥生成が抑制できることを確認した。 (2)P共添加およびAl共添加シリカガラスにおけるYb周辺構造をNMRおよびRaman散乱測定により明らかにし、さらに以下の事実を明らかにした。P共添加の場合、Ybイオンの吸収および蛍光断面積が小さくなる理由は、周辺構造の対称性が高いことによる。また、Al添加濃度が低い領域では、Yb周辺にAlは3個の割合で配位しており、この電荷補償によりYbイオンのクラスタリングを抑制している。 (3)P・Al共添加シリカガラスにおけるフォトダークニングを調べ、主にP添加に由来する欠陥(P-OHC)が生成することを明らかにした。また、2成分の組成変化による屈折率変化を調べ、シリカガラスよりか屈折率が低くなる組成を明らかにした。以上の結果から、単一モード10kW級ファイバレーザーを実現するための最適な組成の検討を進めた。
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