本研究の目的は、半径の大きな希土類イオンと小さな希土類イオンのどちらがより強くβ-Si_3N_4結晶-粒界相界面に結合するかを決定することである。そのため、既に実施され論議を呼んでいるTEMによる粒界観察とは全く異なる「動的な手法」であるα-β転移速度の活性化エネルギーを調査した。具体的には、La^<3+>に少量のLu^<3+>を混合した窒化ケイ素焼結体をホットプレス法で作製し、そのα-β転移速度をX線回折を用いて種々の温度で測定し、アレニウス・プロットから活性化エネルギーを決定した。 (La:Lu比)(活性化エネルギー) 1.0:0.0 587kJ/mol 0.9:0.1 578kJ/mol 0.8:0.2 531kJ/mol 0.7:0.3 391kJ/mol 0.0:1.0 353kJ/mol その結果、上表に示すように、Laに対してLuの量が3割程度でLuのみの活性化エネルギーにほぼ等しくなることが判った。このことは、研究計画の予想通り、イオン半径の小きなLu^<3+>が、イオン半径の大きなLa^<3+>に比べ、より強く界面に結合することを示唆しており、本分野における長年の論争に決着を付ける極めて重要なデータを得ることができた。平成21年度は、上記試料のTEM-EDX観察を行い、β-Si_3N_4結晶-粒界相界面においてLuが偏析している直接的な証拠を得る予定である。
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