1.TEM-EDSによる希土類元素の偏析挙動の分析 平成20年度の実績で報告した通り、イオン半径の大きな希土類酸化物(=La_2O_3)に少量のイオン半径の小さな希土類酸化物(=Lu_2O_3)を混合した焼結助剤を用いて窒化ケイ素焼結体を作成し、そのα-β転移速度から活性化エネルギーを算出した結果、Laに対してLuの量が3割程度でLuのみの活性化エネルギーにほぼ等しくなることが判った。 このことは、研究計画の予想通り、イオン半径の小きなLu^<3+>が、イオン半径の大きなLa^<3+>に比べ、より強く界面に結合することを示唆しており、本分野における長年の論争に決着を付ける極めて重要なデータを得ることができた。本年度の研究計画は、上記の一連の試料をTEM-EDSを用いて観察し、Luが窒化ケイ素と粒界相の界面に偏析していることを直接確認することであった。TEM観察用の薄片試料を作製し、九州大学の超高圧電子顕微鏡室へTEM観察の依頼は完了した。しかしながら、九州大学の超高圧電子顕微鏡室は、新キャンパスへ移転したばかりであり、H21年度中に稼動予定であった高性能TEMの試運転が遅れた結果、TEM観察はH22年度5月にずれ込むこととなった。 2.国際学会のおける成果発表 平成20年度の研究成果をドイツ・ベルリンで開催されたTHERMEC'2009(International Conference on Processing & Manufacturing of Advanced Materials)において口頭発表した(招待講演)。TEM-EDSの分析結果が出次第、当初予定していた米ORNLのP.Becher博士との研究討論を行う予定である。
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