研究概要 |
本研究は安全・安心なクリーン水素エネルギー社会を構築するために高性能な室温作動型オプティカル水素センサを開発するものである。具体的には、ナノからマイクロスケールの微細構造が高度に制御された新規なセンサ材料を創製し、さらなるセンサ性能(感度、応答速度、回復速度、耐久性)の向上を図ることを目的としている。今年度は、当該研究課題の初年度にあたり以下の2点について主に検討を行った。 (1)ナノ構造制御型センサ材料の創製 室温作動型の水素センサを作製するため、材料として室温で水素の触媒作用を有するパラジウム(Pd)を選択した。Pdの微細構造を高度に制御するため、コロイド結晶テンプレート法を用いて多孔質試料を作製した。コロイドには粒子サイズがそろったポリメチルメタクリレート(PMMA,粒径:800mm)球状粒子を用いた。電気泳動法または引き上げ法によりガラス基板上にPMMAコロイド結晶膜を作製し、電気めっきまたは無電解めっきによりコロイド結晶の隙間にPdを析出させ、熱処理により多孔質膜を作製した。電気めっきはスタンダードボルタンメトリーツール(今年度購入備品)を使用した。熱処理が空気中であったため、Pdが酸化され多孔質なPdO膜が形成された。多孔質PdO膜は室温で水素に晒すことによりPdに還元され光学特性変化を示すことから室温作動型オプティカル水素センサとして機能することを見いだした。 (2)水素センサ測定系の構築 本センサは水素雰囲気下における試料の光学特性(光透過率または光反射率)の変化を捕らえることを原理としている。測定系を新規に構築するにあたり測定波長は可視光領域の波長(400nm〜800nm)とした。試料を配置するための気密セルは自作し、ガス系と光学系は今年度の予算にて購入させていただいた。本測定系の最大の特徴は、可視光の全波長領域おける光強度スペクトルとしての経時変化を測定できる点にある。これにより、センサ材料の微細構造に起因した光学特性(構造色)の変化も検出することができる。
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