研究概要 |
鋳造等の処理要さず、アーク溶解法のみで作製できる高強度・高延性のTi基合金インゴット試料(Ti-Fe-B, Ti-Fe-Co-B, Ti-Fe-Cu, Ti-Fe-Cu-Nd, Ti-Fe-Cu-Sn, Ti-Fe-Cu-Nd-Sn)を開発した。このような合金は構造材料への応用が期待されている。XRD, SEM, TEMなどを用いてインゴットの構造を検討した。過共晶合金の構造は初晶の立方cP2金属間化合物(TiFe相或はその固溶相)と、このcP2相+BCC cI2 β-Ti過飽和固溶相の分散共晶相で構成される。少量のB添加で初晶cP2 TiFe相の形状が変化し、微量TiB粒子が検出された。Cu含む合金の構造は規則cP2 Ti(Fe, Cu)相と不規則なBCC cI2 β-Ti固溶相で構成される。Ti_<66>Fe_<22>Cu_<12>合金の降伏強度、最大圧縮強度、塑性変形はそれぞれ1840±80MPa, 2110±210MPa, 5.5±2.2%である。NdもしくはSnの添加によってTi-Fe-Cu合金の延性が改善された。少量のB(0.5 at.%)添加でTi-Fe合金の機械強度は2470 MPaへ増大した。Ti-Fe-Cu合金は、以前のTi-FeとTi-Fe-Co合金とは異なり、強い加工硬化現象が観察されなかった。2000 MPa近い強度は一般的なTi基合金及びTi_3Al, TiAl金属間化合物より高強度である。本合金の延性はTi基バルク金属ガラスに比べて大幅に増大した。Ti_<94>Fe_3Cu_3合金は1050 MPaの最大引張強度と3%の引張延性が得られた。SnとNdの添加による、延性が増加するが、機械的強度が減少することが分かった。TEMでTi(Fe, Cu)とβ-Ti間界面が良い接合になった。cI2β-TiとcP2 Ti(Fe, Cu)相の結晶構造がほぼ同じ、格子定数の差も僅かに4.6%であるため、二相間に整合界面が形成し、整合応力が平衡条件よりも低下していると考えられる。Ti_<72>Fe_<14>Cu_<14>合金の断裂は垂直及び勇断応力方向に起こる。高倍率条件で観察すると、破断面にはディンプル模様を有する延性破断領域と不規則的に破断したと思われる領域が見られた。機械的試験した後クラック伝播面位置の検討した結果により、Ti_<64.7>Fe_<34.8>B_<0.5>合金は過共晶Ti_<65>Fe_<35>合金と同様で、圧縮断裂面の垂直ベクトルと荷重方向間の角度は約90度になっていた。破断は最大垂直応力の面に沿って生じていた。
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