研究概要 |
Mg-Al-Ca系ダイカスト合金は,α-Mg相とラーベス相の二相組織を有する。マグネシウム合金の高温強度向上に果たすラーベス相の有用性を評価するために,Mg-Al系合金およびMg-Al-Ca系合金について,そのクリープ特性を比較・調査した。本年度は,クリープ強度に及ぼすラーベス相の役割を定量的に明らかにするとともに,転位下部組織およびクリープ破断寿命についても調査を行った。得られた成果を,以下に総括する。 1)Mg-Al系合金にCaを添加すると,Ca量の増加に伴い晶出するラーベス相の体積率は増加する。また,ラーベス相は初晶α-Mg粒を被覆するように晶出する。ラーベス相の晶出に伴うクリープ強度の増加量は低温・低応力条件において拡大し,調査を行ったクリープ条件範囲において,クリープ速度は最大で一万分の一にまで低下することを示した。 2)クリープ中の転位組織調査から,初晶α-Mg粒を被覆するラーベス相は,(1)粒界における転位の回復を妨げ加速クリープの開始を遅滞させる役割を有する,および,(2)粒内における転位のクライム速度そのものを遅滞させる役割を有する,という二つの側面からクリープ強化に寄与していることを明らかにした。 3)Mg-Al系合金およびMg-Al-Ca系合金において,最小クリープ速度とクリープ破断寿命はMonkman-Grantの関係と呼ばれる現象論的な関係式を満たす。また,Monkman-Grantの関係式における指数mはCa量によらず1となる。これに対し,比例定数CはMg-Al系合金では0.13であり,Ca量の増加に伴い単調に減少し,Caを1.7mass%含むMg-Al-Ca系合金では0.02にまで低下することを明らかにした。この成果は,本系合金のクリープ寿命予測において有用なものと期待される。
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