| 研究概要 |
Mg-Al-Ca系ダイカスト合金は,α-Mg相とラーベス相の二相組織を有する。マグネシウム合金の高温強度向上に果たすラーベス相の有用性を評価するために,Mg-Al系合金およびMg-Al-Ca系合金について,そのクリープ特性を比較・調査した。本年度はクリープ中の転位モビリティに及ぼすラーベス相の役割を明らかにするとともに,転位モビリティとクリープ挙動との関連についても,あわせて調査を行った。得られた成果を,以下に総括する。(1)両系合金ともに,ダイカスト中に初晶α粒内に高密度の転位が導入される。導入された転位は,底面上成分と非底面上成分から構成されている。転位の非底面上成分は,ダイカスト時には滑らかな形状を有しているが,高温保持中に底面に平行なステップを示すようになる。転位の底面上成分は,応力を負荷すると底面上を容易にすべり,張出した形状となる。また,ジョグはクリープ中にクライムを使って前進し,底面上成分に追従する。ラーベス相は,ジョグのクライム速度を低減させるはたらきを有する。(2)両系合金ともに,クリープ変形機構は転位クライムである。これに対し,応力負荷直後においては,ダイカスト時に導入された転位の底面上成分のすべりがクリープを支配する。ダイカスト時に導入された初期転位のすべりは,遷移域初期における大きなクリープ速度の原因となり,実用上,締結ボルトのゆるみなどの原因となり得る。合金に前変形を加え,初期転位の底面上成分を前進させることにより,遷移初期クリープ速度を低減させることが可能となることが明らかとなった。
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