研究概要 |
マイクロ波プラズマ発生装置を用いてa-CN_x膜を作成した。Arのマイクロ波(2.45GHz,100W)放電生成物とBrCNを真空チャンバー内で反応させてCNラジカルを発生、Si基板上に堆積させてa-CN_x膜を作成した。基板ステージに外部から高周波(13.56MHz)電圧を印加し、負の自己バイアス電圧(-V_<RF>)を発生させた。これによりプラズマ中のイオン(主にAr^+)が基板に引き寄せられ、膜表面をイオン衝撃(以下IBと略記)することによって高硬度を達成させる。生成したa-CN_x膜の赤外、ラマン分光分析、超微小押し込み硬さ試験を行った。 Ar圧力0.1Torrの条件で最大硬度20GPaのa-CN_x膜が得られた。赤外吸収分光分析にもとづくと、高硬度を示す膜では水素終端構造が減少した。このことから、IBによって膜中の水素原子がはじき出されることがわかった。またラマン散乱分光分析では、IBを行わない軟質な膜ではラマンのピークは観測されず、強い蛍光のバックグラウンドが観測された。このことは一次元的な共役系が発達していることを示唆した。IBを施すと、蛍光のバックグラウンドはほぼ消失し二次元的な構造に起因するG-bandとD-bandが現れた。しかし、これらのピーク形状や相対強度は膜硬度に対して一定であったため、IBによってそれらの構造は変化していないと考えられる。このことからIBによる水素原子のはじき出しに伴い、一次元的な構造が直接三次元的な構造へと変化し、そのために膜硬度が上昇したと考えられた。 本研究と並行して、希ガスのECRプラズマを用いたBrCNの解離励起機構を調べた。その結果、CN(B)状態の生成機構はNe,Ar,Krプラズマでは高速の自由電子による電子衝撃、HeプラズマではHe^+からの電荷移動(He^++BrCN→BrCN^+)とそれに引き続く電子・イオン再結合(BrCN^++e^-→CN(B)+Br)により生成することを見出した。
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