研究課題/領域番号 |
19560699
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
伊藤 治彦 長岡技術科学大学, 工学部, 准教授 (70201928)
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研究分担者 |
斎藤 秀俊 長岡技術科学大学, 工学部, 教授 (80250984)
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キーワード | アモルファス炭化ケイ素 / アモルファス窒化炭素 / プラズマCDA / 硬質膜 / レーザー誘起蛍光 / プラズマ診断 / CNラジカル / 付着確率 |
研究概要 |
本年度は水素原子を含む気体分子のプラズマ分解により、硬質の薄膜物質を得ることができるかどうか、いくつかの事例を検証した。さらにレーザーを用いたプラズマ分光診断を行いプラズフCVD反応過程を詳細に検討した。 1 Arのマイクロ波放電生成物によるSi(CH_3)_4(TMS)の分解反応により、水素化されたアモルファス炭化ケイ素薄膜(a-SiC:H)を形成させた。基板ステージに高周波バイアスを印加し硬質膜を得た。今回新たにピコデンターを用いた硬さ試験ならびに兵庫県立大学の加速器NewSubaruを用いたX線吸収端近傍微細構造(NEXAFS)スペクトルの観測を行った。その結果、バイアスを印加しない場合は2GPa程度の軟質の膜であったものが、自己バイアス□20V以上で8-10GPaと大幅な硬度の上昇が見られた。Si基板の硬さが7GPaであったことから、それを上回る硬さが得られたことになる。膜の赤外吸収スペクトルからは水素終端構造が減少、NEXAFSスペクトルからはC-C結合のsp^2混成軌道成分が減少していた。これらが硬質化をもたらした要因であると結論された。 2 Arのマイクロ波放電生成物によるアセトニトリル(CH_3CN)の分解反応で水素化されたアモルファス窒化炭素(a-CN_x:H)薄膜を形成させた。基板ステージに高周波バイアスを印加したところ、やはり硬質化が見られた。ピコデンターによる硬さ試験で、バイアスを印加しない条件では1GPa以下、負の自己バイアス30Vで3GPa程度と、a-SiC_x:Hほど急激ではないもののやはり硬質化か見られた。赤外スペクトルで水素終端構造が減少しC-N単結合成分が増加する傾向が見られ、これらがa-CN_x:Hの硬質化の原因と考えられた。1、2を通し、原料中に水素原子が含まれていても硬質化か可能であり、その原因の一つに水素原子の脱離があることが判った。 3 Arのマイクロ波放電フローを用いたBrCNのへ解で形成されるアモルファス窒化炭素(a-CN_x)薄膜の形成では、CNラジカルが前駆体になることが判っている。このことを逆に利用すると、CNラジカルの付着確率を正確に決定できる。本研究ではレーザー分光法によるCNラジカルの数密度、時間分解発光計測にもとづく流速、単位面積あたりの膜重量にもとづき、CNラジカルの付着確率を決定した。さらに、反応系にH_2Oを添加して付着確率がどのよ引こ変化するかを調べた。その結果、H_2Oを添加しない場合の付着確率は0.07-0.03とArの圧力の上昇(0.2-0.4Torr)と共に減少した。またH_2Oを添加した系では0.10-0.05となり、H_2Oを添加しない場合に比べて系統的に高い値となった。当初H_2Oを添加した系ではCNラジカルが膜表面の水素原子引き抜き反応によって消費されるために付着確率は減少すると予想していたが、結果は予想に反していた。原因を詳しく調べた結果、Ar圧の上昇またはH_2Oの添加により電子密度が減少していた。このことはAr^+によるエッチングが減少したことを意味しており、付着確率がその影響を受けていることが判明した。
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