研究概要 |
本研究は,シリコン微細加工技術を礎として,ナノ構造の導入によりシリコン系熱電変換材料の性能指数の向上を目指している.本年度得られた主な成果を以下に示す. (1) 極薄シリコン層の熱電特性評価 ゼーベック係数測定系にスイッチモジュールを組み込んだデジタルマルチメータを導入し,温度および熱起電力の時間変化を同時測定できるようにした.これにより,測定精度を格段に向上させた.改良した装置により6〜100nmに薄層化したSOI基板のゼーベック係数を測定したところ,この膜厚範囲ではバルクシリコンと同じ値を示した.この結果は,薄膜の利用によりコストダウンできることを示している.また,高不純物濃度領域では,不純物バンドの影響と見られるゼーベック係数の増加を見出した. (2) KFMによる熱起電力の測定 ナノ構造材料の熱電変換特性を評価する手法として,KFM(表面電位顕微鏡)による熱起電力の測定を試みた.バルクシリコンに対して測定したところ,温度差の増加に対して表面電位差も増加しており,熱起電力が測定できていることを示した.その結果からゼーベック係数を見積もったところ,バンドベンディングを考慮することにより従来の手法とほぼ同じ値が得られ,ナノスケール熱電変換材料の特性評価技術の確立に向けて大きく前進した.
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