研究概要 |
世界的規模で急速な高齢化が進む中,整形外科的ならびに歯科的な骨に関する疾病が年々増加し,病巣の確実で素早い治療法が切望されている.現在この目的で,高生体活性化のための表面処理の重要性がクローズアップされている.しかし,「方向性を持たない極めて微細な凹凸(数十nm以下)」から「方向性を持ったμmオーダーの粗雑な凹凸」についての広範囲にわたる系統的な表面凹凸に関する研究は一切行われておらず,骨伝導性に優れる表面粗さについての一般的な見解は未だに得られていない.本研究では,骨伝導性物質であるチタニアと上記の表面凹凸を組み合わせ,骨伝導性におよぼす相互の影響を調べるとともに,より高い生体活性を有するインプラント材を作製することを目的とした.チタニア製膜の手法として,作製したミクロ凹凸を維持した薄膜状のチタニア製膜が可能な手法,すなわち(1)気相中高温酸化法ならびに(2)水溶液中陽極酸化法を採用した.本研究では,ミクロ表面凹凸とチタニアコーティングの組み合わせによって,骨伝導性に極めて多大な相互作用があることを見出した.また,同一のチタンの表面凹凸材に対する酸化手法の検討によって,陽極酸化皮膜作製に用いる水溶液の種類によっても,動物埋植試験結果に多大な差が生じることも明らかにした.さらには,水溶液中陽極酸化,気相中高温酸化といった酸化手法によっても,骨伝導性に影響が現われること,表面凹凸を同等とした場合には,アナターゼとルチルの相違による骨伝導性への影響はないことも見出した.
|