代表的な水素吸蔵合金LaNi_5について空孔形成に関する第一原理計算を行い、水素吸蔵時の空孔形成能および空孔の水素トラップ能を調べた。まず、LaNi_5の空孔形成エネルギーと空孔形成による格子定数の変化について計算を行い、LaNi_5中の2種類のNiサイトではNi 2cサイトがNi 3gサイトよりも約0.8 eVも空孔形成エネルギーが小さく、Ni 2cサイトの空孔形成がa軸を短くしc軸を長くするのに対してNi 3gサイトの空孔形成はa軸を長くしc軸を短くすることが分かった。これらの結果と実験結果との比較から空孔形成サイトがNiの2cサイトであることを明らかにした。つづいてLaNi_5中の格子間及びNi空孔と水素の結合エネルギーの計算を行いNi空孔の水素トラップ能を評価した。Ni空孔中に1〜2個の水素が存在する場合は約0.4 eVの大きな結合エネルギーを持っており水素がNi空孔に強くトラップされることが分かった。また水素が6個存在する場合でも約0.1 eVの結合エネルギーを有することが分かった。つづいてLaNi_5水素化物の空孔形成エネルギーの計算を行い、水素吸蔵時の空孔形成能の変化を調べた。LaNi_5の空孔形成サイトであるNi 2cサイトは水素吸蔵による対称性の低下で2種類のサイトに分かれるが、このうち水素が4配位するサイトの空孔形成エネルギーが大きく低下し、fcc Niの化学ポテンシャルを用いて計算した場合、空孔形成エネルギーがゼロ近くにまで低下する結果となった。従って水素吸蔵時に水素吸蔵合金の空孔形成エネルギーが著しく低下することが、水素吸蔵合金における多量空孔生成の一因になっていると考えられる。
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