研究概要 |
本年度は,以下の通りMo-Ti-Zr系合金長大粒組織材の希薄COガス熱処理挙動の検討を行うと共に,各種強度試験を行い,本系複合材料の高温構造材料としての有効性を明らかにした. まず始めに,市販のTZM合金(Mo-0.5%Ti-0.08%Zr-0.03%C)圧延材に対して1150℃〜1600℃の範囲で3段階の多段内部窒化処理を行い,再結晶温度が約1700℃のTZM合金多段窒化材を得た.これらを真空中1900℃で1h加熱することにより,多段内部窒化で分散させた窒化物粒子を分解・脱窒し,アスペクト比が最大で約50のTZM合金長大粒組織材を作製した.室温から液体窒素温度までの3点曲げ試験を行ったところ,TZM合金長大粒組織材は液体窒素温度においても延性を示し,低温延性が極めて優れていることが分かった.前年度の成果に基づいて,TZM合金長大粒組織材に対し希薄COガス(1600℃)を行ったところ,試料表面部のビッカース硬さが約100Hv上昇し,それによって室温ならびに1500℃における降伏強度がそれぞれ約1.5倍,約2倍に向上することが分かった.長大粒組織化後に数十ミクロンサイズの島状粗大等軸再結晶粒が残った場合,これらが破壊の起点となるために,延性-脆性遷移温度(DBTT)が上昇し低温延性が損なわれるが,希薄COガス熱処理により結晶粒界が強化されるため,島状粗大等軸再結晶粒が存在しても低温延性が損なわれないことも分かった.また,希薄COガス熱処理によって析出した酸化物粒子の高温安定性を検討した結果,真空中2000℃においても分解せずに安定であることを明らかにした.
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