研究概要 |
本研究では、ハーフホイスラー型TiNiSn系合金において、出力因子Pと性能指数ZTとの改善のために、ドーパントの探索を行い、熱処理条件を制御することによって、構造欠陥や格子サイト上の占有確率の最適化を金属学的にはかることを目的としている。このため、先ずドーパント(第4、5、6添加元素)を含むハーフホイスラー型TiNiSn系合金を作製し、液体急冷によってリボンに加工した後、熱処理を行った。ドーパントとしては、Sb、Cu、Co、Zr, Hfを用いた。次に、電導度測定、ゼーベック係数測定、熱伝導度測定、性能指数測定、出力因子の算出などを行った。ここで、性能指数測定については、真空中で、試料サイズを変えながらハーマン法による性能指数を測定し、最終的に試料形状の影響を除外する方法を採った。また、電子顕微鏡高分解能像観察、EDX分析、X線回折、収束電子線回折、電子顕微鏡Electron channeling X-ray microanalysis、 X線リートベルト解析を行い、構造欠陥や格子サイト上の占有確率についての知見を得た。得られた主な結果は次の通りである。ドーパントのSb, Zr, Hf, Co, Cuを添加した場合、添加量に依存して、価電子数と構造欠陥、格子サイト上での占有確率が変化して、性能指数と出力因子は増加したり、減少したり複雑に変化した。また、熱処理時間、熱処理温度に伴って構造欠陥や格子サイト上での占有確率が変化し、出力因子や性能指数は1050℃、48時間のみならず120時間の熱処理を施した場合にもそれぞれ大きくなった。熱電性能の高いこれらの試料の間では構造欠陥や格子サイト上での占有確率が異なるため、熱電性能が高くなる原因は電導度、ゼーベック係数の増大、あるいは熱伝導度の減少によるなど異なっていた。
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