研究概要 |
航空機ジェットエンジンや発電用ガスタービンのタービン翼には,耐酸化コーティングと遮熱コーティングを組み合わせた,遮熱コーティングシステムが施される.しかし,Reを多く含む単結晶超合金にアルミナイズを施した場合,コーティングにより通常生成されるNiとAlの相互拡散層(IDZ:Inter-Diffusion Zone)の下に,SRZ(Secondary Reaction Zone)が生成されることが報告されている.ここで,SRZやIDZは多結晶粒組織からなり非常に脆弱なため,荷重を負担できないことから有効断面積の減少により実効応力が上昇し,応力破断寿命が低下すると考えられている.そして試験片厚さが薄いほど有効断面積の減少率が大きくなるため,寿命低下率も大きくなる3).またSRZの生成は温度,時間,コーティング前の表面の残留応力(表面処理),合金組成に依存すると報告されている.さらに,第3世代単結晶超合金TMS-75にAl拡散浸透処理により耐酸化コーティングを施した場合,SRZやTCP(Topologically Close-Packed)相の析出が結晶二次方位{110}に選択的に発生することが報告されている.しかしながら結晶二次方位を考慮し,耐酸化コーティングを行うことによるクリープ特性への影響について調べた研究はほとんど行われていない.そこで本研究では,第3世代のNKH304およびNKH304にRuを添加した第4世代合金を供試材とし,{110}面及び{100}面を平行部側面に持つアルミナイズを施した試験片を作製し,900℃/392MPaにて<001>方向のクリープ試験を行い,クリープ特性に及ぼす結晶二次方位の影響について調べ以下の知見を得た. 1)コーティングを施した単結晶Ni基超合金の破断寿命は,{110}材の方が{100}材に比べ短くなった,これは,試験片の有効断面積の減少率および,TCP相,ボイド,{111}すべり面の配置に関係したクリープき裂の生成・進展挙動の違いによるものと考えられる. 2)Ruを添加したNKH-510のコーティング材のクリープ破断寿命の低下率は,NKH-304に比べ小さかった. 3)NKH-510には,基材中にTCP相が多数析出し,{110}材ではボイドが観察された.
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