研究概要 |
本研究は環境にやさしい新規な強磁性強誘電体材料を創製することを目指し,Ba系ペロブスカイト酸化物単結晶材料のナノ構造を制御することにより,中心対称変移型誘電体に強磁性機能を付与させるための結晶場を構築することを目的としており,本年度の研究により以下に述べる成果を得た. 1.基板材料の選択による歪因子の検討 Ba(Fe, Zr)O_3多結晶バルク体やSi基板上に作製したBa(Fe,Zr)O_3多結晶薄膜は強磁性秩序を持たない一方で,SrTiO_3基板上に合成したBa(Fe,Zr)0_3単結晶薄膜は室温においても強磁性を示す.これはすなわち,基板と薄膜の格子定数の相違によるミスフィット歪に起因して,強磁性秩序が出現している事を示唆しており,歪場の形成によるFe^<4+>イオンの偏析がその主たる原因であることを明らかにした。よって,Si基板上に作製したBa(Fe,Zr)O_3薄膜においても,適切なバッファー層を用いることで強磁性秩序が付与される事が期待できる.そこでSi基板上にバッファー層としてSrTiO_3膜を作製した後Ba(Fe,Zr)O_3薄膜を作製したところ,多結晶であるにもかかわらず室温で強磁性を示す薄膜を得た.この結果は,現状のSi基盤技術応用に対しても,本物質が磁性誘電体膜として機能する可能性を示唆したものである. 2.イオンサイト及びイオン価数の制御による磁性制御 SrTiO_3基板上のBa(Fe,Mn)0_3薄膜の合成条件の適切な制御により,Fe,Mnのイオン価数を制御し,その磁気秩序状態を変化させることに成功した.特に,製膜中酸素分圧を大きくすることにより,Mnイオンの価数状態は大きく,Feイオンの価数状態は小さくなること見出し,結果として超交換相互作用によって大きな磁気モーメントが得られる事を明らかにした.
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