研究概要 |
本研究課題では、ECAP法により超微細結晶化したα黄銅(Cu-10wt%Zn)について応力腐食割れ(Stress Corrosion Cracking:SCC)感受性を評価し,結晶粒径の影響,平衡・非平衡粒界の影響を明らかにすることを目的とした.ECAP法により室温で8パス加工することにより,結晶粒径が約250nmまで微細化することが確認された.8パス加工後に200℃で40秒の短時間熱処理を行った.強ひずみ加工で形成した粒界は過剰な粒界転位を有する非平衡粒界と考えられており,この熱処理により過剰な転位は回復し,平衡粒界に変化すると考えられる.さらに比較として,ECAP加工しない0パス材,加工硬化を目的とした1パス材を評価した.SCC試験は,I型試験片により室温(約290K),14%NH3雰囲気中に24時間放置する方法で行った. SCC試験の結果,8パスした超微細結晶材は0パス材、1パス材に比べて、σ/σysが低い値でき裂の発生が確認された(σを負荷応力,σysをその試料の0.2%耐力).また、ECAP加工後の短時間熱処理によりき裂が発生する開始応力が高くなり、SCC感受性が低下することが明らかとなった.ECAP加工などの強ひずみ加工では結晶粒の微細化とともに結晶粒界が非平衡となり、粒界エネルギが高くなったことがSCC感受性の高まった原因だと考えられる.また、ECAP後の短時間熱処理によりSCC感受性が低下した理由として、結晶粒界の平衡化により粒界エネルギーが低下したためと考えられる。
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