研究概要 |
近年優れた耐食性を示すチタンおよびその合金が歯科医療用材料として注目されているが,う食予防に使用されるフッ化物水溶液には耐食性を示さない,そこで,研究代表者はフッ化物水溶液中において耐食性を示すTi合金の開発を行い,Ti-Mg合金がフッ化物水溶液中で優れた耐食性を示すことを見出した.この成果を拡張するために,歯科医療材料として使用頻度の高いTi合金であるTiNiやTi-6Al-4VなどにMgを添加することで,フッ化物水溶液に対する耐食性の発現を検討すること,およびTi-Mg合金の耐食機構の解明を行うことを本研究の目的とした.平成19年度は上記研究の基礎研究として,TiNi超弾性合金のフッ化物水溶液中での耐食性能をTi,Niと比較検討した. 使用するフッ化物水溶液は,フッ素添加歯磨剤中のフッ素濃度(約1000ppm)に相当する0.024kmol・m^<-3>のフッ素イオン濃度を含有し,pHが3.5,3.8,4.8になるようにフッ酸とフッ化ナトリウムと蒸留水で調整した水溶液である.試験30分前より窒素ガスを用いて脱気する.評価試験方法は,3電極式定電位電解装置を用いた電気化学的動電位分極法とした.参照電極には銀/塩化銀電極を,対極には白金電極を用いた.電位掃引速度は1.6mV・s^<-1>,-2.0Vから1.0Vの範囲を測定し,得られる電位一電流密度曲線(分極曲線)における活性態電流密度により,本合金の耐食性を評価した. pH4.8の水溶液中では,Niには活性態が現れ,顕著な溶解を示したが,TiおよびTiNiは活性態を示さず耐食性に優れることがわかった.pH3.8の水溶液中では,NiおよびTiに活性態が現れたが,TiNiは活性態を示さなかった.pH3.5の水溶液中ではすべての試料に活性態が認められ,Niの活性溶解がより抑制された.
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