研究概要 |
近年優れた耐食性を示すチタンおよびその合金が歯科医療用材料として注目されているが,う食予防に使用されるフッ化物水溶液には耐食性を示さない.そこで,研究代表者はフッ化物水溶液中において耐食性を示すTi合金の開発を行い,Ti-Mg合金がフッ化物水溶液中で優れた耐食性を示すことを見出した.また、昨年の研究から、TiNiがフッ化物水溶液中で優れた耐食性を示すことを明らかにした。そこで、今年度は種々のTi-Ni合金を作製し,フッ化物水溶液に対する耐食性の発現を検討することおよびその耐食機構の解明を行うことを本研究の目的とした. その結果、TiはpH3.8以上のHF+NaF([F^-]=0.024 kmol・m^<-3>)水溶液中で活性態が出現し耐食性が悪化した.一方,ほとんどのTi-Ni合金はpH3.4以上のHF+NaF([F^-]=0.024kmol・m^<-3>)水溶液中で活性態が出現したが,Ti-2.0mass%Niのみ活性態が出現せず不働態を維持していた.また,Ti-Ni合金の自然電位はTiに比べ高電位側にシフトしており,腐食速度もTiに比べ低下していた.特にTi-2.0mass%Niは,他のTi-Ni合金に比べ著しく自然電位は高電位側にシフトし,腐食速度は低下した.特に,Ti-2.0mass%Niはアノード電流密度が最も低下し,著しく自然電位が高電位側にシフト,腐食速度が低下したため最も優れた耐食性を示すことが明らかになった. TiにNiを添加すると,カソード電流密度は不変であったが,Tiに比べ活性態アノード電流密度が低下することで,自然電位はTiよりも高電位側にシフトし,腐食速度はTiよりも低下したと考えられる.
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