研究概要 |
本研究では,熱電変換材料としての実用化を目指して,高い熱電性能を有する新規クラスレート半導体の創製に関する基礎的研究を行う。具体的には,材料プロセス,ホスト・ゲスト元素置換効果,バンド構造計算に基づく熱電物性解析と材料設計について検討する。平成19年度の主な研究成果を以下にまとめる。 1.Si系クラスレートの熱処理効果について検討し,X線回折,組成分析,組織・構造観察等の評価を行った結果,熱処理によって異相の低減・組成の均一化に一定の効果のあることがわかった。しかし,キャリア散乱低減、移動度増加などの熱電物性の充分な向上には至っておらず,プロセスの改善・工夫と条件の最適化の検討を継続する必要がある。 2.Ba_8Au_xGa_ySi_<46-x-y>において熱電特性へのホストAu置換効果について調べた。Ba_8Ga_ySi^<46-y>ではGa組成を変化させてキャリア補償を行ってもn型のみでp型はできないが,Ba_8Au_xGa_ySi_<46-x-y>ではAu組成xがx=0-3の範囲ではn型でx=4-6ではp型となることを見出した。n型の組成範囲では,Au置換によって熱電能が増加する効果があり,有効質量は,Ba_8Ga_ySi^<46-y>では約1.5m_0に対してBa_8Au_xGa_ySi_<46-x-y>では約2.5m_0と増加することがわかった。 3.Ba_8Au_xGa_ySi_<46-x-y>のAu組成x=1の場合について,BaゲストをSrあるいはEuで置換したn型Ba_6A_2AuGa_<13>Si<32>(A=Sr,Eu)を作製し,熱電特性へのゲスト置換効果についても検討したところ,ゲスト置換によって熱電能が増加する効果のあることが示唆された。 4.Siクラスレートの電子構造計算を実施して元素置換の効果を検討したところ,ホストのAu置換およびゲストのSr・Eu元素置換のいずれも伝導帯底付近のエネルギー分散関係に影響を及ぼすことが判明した。
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