研究概要 |
本研究は金属系水素分離膜の水素脆化ハイブリッドその場膜強度評価法を確立し,固溶水素濃度と水素脆化との関係を調べ,脆化機構を解明することを目指したものである。平成19年度は「(1)水素環境中あるいは水素を透過させながら金属膜の破壊試験を行うことが出来るin-situ小型パンチ試験装置に水素選択透過性試験装置を組み込んだハイブリッド評価システムを設計・製作し,(2)5族金属の水素脆化その場測定により,耐水素脆化に対する限界固溶水素濃度を系統的に求める」ことを目標として研究を展開した。得られた知見を以下に要約する。 1.水素分離膜ハイブリッド膜強度評価システム設計として,水素脆化その場測定に適した配管システムおよび膜破壊検出機能の概念設計を行った。本システムでは高温での水素環境中および水素透過中に動的あるいは静的にその場破壊試験を行うことを目的としており,所望の環境試験に資する設計が完了した。 2.静的な膜破壊検出機能の付加を目指して,既存のガスクロマトグラフへのメタナイザー触媒,水素炎イオン化検出器(FID)の組込みを行い,水素ガス中の微量不純物ガス成分の分離・検出が可能となった。さらにマスフローメーターをin-situ小型パンチ試験配管システム内に組込むことで,流束から水素透過能が直接評価可能となった 3.水素透過膜材料のPCT曲線に基づいた固溶水素濃度と変形・破壊形態との関係を求め,耐水素脆性についての限界固溶水素濃度を定量的に評価する手法を確立した。そして573〜723Kの温度範囲における純ニオブ水素透過膜の固溶水素濃度とSP吸収エネルギーの関係を調べたところ,H/Nbが約0.25を超えると同エネルギー値は急激に低下しており,膜試料の温度や加工履歴,結晶粒サイズに殆ど依存しない耐水素脆性に対する限界固溶水素濃度が存在していることを明らかにした。
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