研究概要 |
本研究は金属系水素分離膜の水素脆化ハイブリッドその場膜強度評価法を確立し,固溶水素濃度と水素脆化との関係を調べ,脆化機構を解明することを目指したものである。平成20年度は「(1)膜強度特性と構造転移特性の関係と金属と水素の相互作用の計算から固溶水素脆化機構を探求する,(2)合金元素の効果を定量的に評価して,延性一脆性遷移を温度と固溶水素量の関数として求めた新しい材料設計クライテリオンを構築し,パフォーマンス・チューニングされたニオブ(Nb)合金膜を提案する」ことを目標として研究を展開した。得られた知見を以下に要約する。 1. 水素脆化その場測定システムの拡張を目指し,GCバルブ切換えシステムの組込みを行い,各膜強度評価装置をインライン配置することにより,ミクロで静的な膜破壊検出機能を付加した。 2. 水素透過能の経時変化と割れ形態評価に向けた検討として,VCR継手を用いたNbおよびNb合金の水素透過環境下での流束の時間変化を測定した。またPCT曲線を基にして膜両面の負荷水素圧力(水素濃度差)を変化させた際の静的膜割れ検出を行い,破面性状解析およびすべり挙動特性の観察結果と併せて固溶水素脆化に対する感受性の変化を総合的に解明し,耐久性向上に向けた知見を得た。 3. 水素の溶解と拡散に及ぼす合金効果を水素透過能(流束)の観点で求めた。その結果,純Nb中の水素の拡散係数はPd-Ag合金よりも小さいが,NbにRuやWなどの合金元素を添加することにより,水素拡散係数が高くなり,水素透過能が向上することを明らかにした。また,この知見を基にパフォーマンス・チューニングされたbcc単相設計合金は,高い水素透過能と耐水素脆性,加工性および耐久性を兼ね備えており,非パラジウム系水素透過膜合金としての適用が期待できることを明らかにした。
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