研究概要 |
平成19年度は、次の2つの項目について検討した。(1)膜組成:AIF_3は極めて安定な絶縁体であり、ナノグラニュラー構造における粒界相にAIF_3を用いることにより、磁性金属グラニュールと粒界相絶縁体が混じり合わず、クリアーに分離された状態のナノグラニュラー構造膜が得られる可能性が高い。本年度は、新組成系の(Fe-Co)合金とAlF_3からなるナノグラニュラー膜を作製し、TMR等を検討した。(2)成膜条件:薄膜試料は、スパッタ法によって作製した。スパッタ膜の構造は成膜条件に大きく依存する。本年度は,基板温度に着目し、種々の温度に加熱した基板上に膜中の磁性金属量と絶縁体量を変えて薄膜を作製し、膜構造やTMRを検討した。その結果、それぞれ以下に示す成果が得られた。(1)膜組成FeCo-AIF系において、従来材料のTMR最大値と同等である、室温で12%のMR比を示す膜が得られた。さらに、従来材料では、ρo=10^4=〜10^6μΩmに大きなTMRを示す材料が存在しないが、FeCo・AIF系はちょうどその領域において大きなTMRを示す。このことは、FeCo・AIF膜を磁気センサ(GIGS)に用いることによって、素子抵抗値などの仕様範囲・設計の自由度が大幅に拡大することを意味する。さらにTMRは、550Kまでの加熱に対し安定であり、良好な耐熱性を有する。(2)成膜条件:加熱基板上に作製した(Fe-Co)-(Mg-F)ナノグラニュラー膜は、良好な耐熱性を示し、それらのTMRは、成膜時の基板温度未満の加熱に対し安定であることを見出した。特に、基板温度673Kの基板上に作製した膜は、約14%(800kA/m、室温)のMR比を示し、GIGSの応用で必要とされる16ckAimの磁界中でも、約10%の大きな値を示した。また、これらの値は、473Klで200時間保持の長時間過熱に対しても不変であり、良好な耐熱性を有する。
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