研究概要 |
MgあるいはMg合金融体をB圧粉体に外部から拡散反応させてMgB2を生成させる外部拡散法でMgB2/Fe複合線材を作製した。純Mg棒を鉄チューブの中心に配置し、Mg棒と鉄チューブの間の隙間にB粉末またはB-(5-10)モル%SiCの混合粉末を充填してMg/[B-(SiC)粉末]/Fe複合体を作製し、これを溝ロールならびにダイス線引きにより、径1.2mmのワイヤーに加工した。加工途中に破断することなく、室温において最終的な線材径まで加工することができた。このワイヤーから長さが40mmの短尺ワーヤーを切り出し、670-800度で1-3時間の熱処理を行った。これらのワイヤーの臨界電流密度Jcを4.2K、種々の磁界中で測定した。Jcは熱処理温度が下がると共に上昇する傾向を示し、最も高いJcは、670度、3時間の熱処理をした5モル%SiC添加ワイヤーで得られた。その値は8テスラの磁界中で100kA/cm^2以上、10テスラにおいては41,000A/cm^2に達した。これらの値は、MgB_2線材を作製する方法として最も一般的なパウダー・イン・チューブ(PIT)法による線材のJcよりもはるかに高く、MgB_2線材としては最高レベルの値が得られた。特に8Tにおいて実用レベルの100kA/cm^2が得られたことは画期的な成果であると考えている。これらの線材の微細組織を走査電子顕微鏡で観察したところ、生成したMgB_2層には空隙が少なく、PIT法線材に比べてはるかに高いMgB_2の充填率が得られることがわかった。この高いMgB_2の充填率が、拡散法線材の高いJcに結びついていると考えられる。
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