研究概要 |
TiAl基合金は軽量耐熱材料として優れた特性を示すため,自動車用ターボチャージャーに用いられている.さらにこの合金は航空機エンジンの低圧タービンとして実用化が間近であるが,高温では十分な耐酸化性を示さない.実用合金はNbを多量に添加しすることによって耐酸化性を実現しているが,希少資源であるNb量の低減し,リサイクルを考慮したシンプルな合金設計を行なうことが望ましい.そこでNb添加量を低減した合金に表面処理を施すことによって十分な耐酸化性を得ることができるかどうかを検討した. 低Nb合金のTi-49mol%Al-2mol%Nbに粉末パック法によってAl拡散浸透処理を施し,高Nb合金であるTi-45mol%Al-6mol%Nbと酸化特性を比較検討した.その結果,2元系TiAlの場合と同様,Ti-49Al-2Nb合金にはAl拡散浸透処理によって高Al濃度の表面処理層が形成された.処理後の試料は酸化温度が950℃と高温の場合にも優れた耐酸化性を示し,200時間経過後でもその酸化増量は高Nb合金のものよりも少なく,良好な酸化特性を維持できることが確認された.また,他の表面処理法として,2元系TiAlへのイオン注入で耐酸化性改善効果が認められたCuおよびZnの真空蒸着を試みたが,Znは蒸気圧が高いため,良好な蒸着は困難であることが判明した.CuおよびZnを蒸着したTiAlの酸化試験結果は未処理のものと同程度かあるいはかえって酸化増量が増大し,耐酸化性改善効果は認められなかった.以上のようにTiAl系合金への表面処理としてはAl拡散浸透処理が最も有望である.TiAl系合金のNb濃度を低減しても,表面処理を組み合わせることによって十分な耐酸化性が得られることが明かとなった.
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