研究概要 |
本年度は研究立ち上げと次年度からの円滑かつ本格的な研究推進を目的として,主として以下の項目を遂行した. (1)液圧測定法の検証 本研究では,金型面に直径2mm穴を貫通させて,その出口側に圧力センサを取り付けることで,対向液圧成形中の圧力媒体流出特性を検討することが主目的である.この液圧測定方法の妥当性を検討するため,圧力媒体の流出のみを目的とした簡易な金型を製作し,その測定精度を詳細に検討した.圧力媒体流出中に測定された金型面上の液圧分布は初等理論で与えられる分布と良好に一致した.また液圧による金型押し上げ力と試験機による金型圧縮力も良い釣り合いを示した.以上の結果より,上記の液圧測定法による測定値は,定性的,定量的に妥当であることが示された.以後の実験では上述の測定法を用いる予定である. (2)対向液圧成形金型の設計製作 現有の100kN万能試験機により実験可能な,対向液圧成形金型を設計製作した.製作した金型の仕様を以下に箇条書きに示す.(1)35mm四方の角筒形状の絞りが可能であり,最大液圧40MPaまで付与することができる.(2)液圧室内およびフランジ面上に計7点の圧カセンサを取り付け,成形中の各部位の液圧推移を測定することが可能である.(3)しわ押さえをナットで独立に固定する方法を採用することにより,0〜80kNの範囲で任意のしわ押さえ力を設定することができる. (3)圧力媒体流出特性に関する基礎検討 対向液圧角筒絞り成形中の液圧推移について,基礎的な検討を行った.得られた知見を箇条書きに示す.(1)液圧室内圧力がピークをとった直後に圧力媒体の流出が開始し,その後液圧はしばらく安定的に推移する.(2)安定領域では加工力と液圧による金型押し上げ力が良好に釣り合うことが確認された.これより,安定領域における液圧を擬似的な流出開始圧力と定義すれば,力の釣り合いから流出開始を予測できることが示された.
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