研究概要 |
対向液圧成形中の圧力媒体流出現象を有限要素定式化する上で鍵となる二つの現象に焦点を些てて,詳細な検討を行った.またその結果に基づいて定式化手法について検討した.以下に得られた知見を示す. (1)創成液圧下で実験を行い,圧力媒体流出特性と摩擦低減効果の関係を調査した.昨年度までの強制加圧下での結果と比較すると,液圧室内圧力はほぼ同程度であったがダイ面上の液圧は大幅に低下した.これは,強制加圧下に比べて流出量が大幅に減少したためと考えられる.このとき破断ストロークも,強制加圧下に比べて低下した.これは流出量が減少したことで摩擦低減効果が低下したためと考えられ,ダイ面上の液圧と摩擦低減効果には大きな相関があることが示唆された. (2)圧力媒体流出時は上型-下型問の間隙が最大で数十μm程度増加し,この間隙変化そのものが成形性に影響を及ぼす可能性がある.そこで,間隙を流出時よりもさらに数十μm程度大きく固定して実験を行った.その結果フランジしわの発生が観察された.これは間隙が過度に大きいためと考えられる.通常の成形ではしわは発生しないごとから,この結果より,過度に大きな間隙変化は変形に影響しうるものの,圧力媒体流出時程度であれば影響は小さいことが示唆された.一方破断ストロークは通常の場合に比べて向上した.子れは摩擦低減効果の影響よりもむしろ,過度の間隙により材料と金型の接触がほとんどなくなったためと考えられる. (3)以上の結果に基づき,圧力媒体流出の有限要素定式化手法を検討した.まず(1)の結果から,圧力を直接離散化して材料に作用させる方法の他に,摩擦係数を圧力の関数として擬似的に摩擦低減を再現する方法も可能なことが示唆された.一方(2)の結果から,圧力媒体流出時の間隙変化(上型上昇)は計算上無視しうることが示唆された.これらのモデルは計算コスト的に有利であり,実用上非常に有効な手法になりうる.
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