研究概要 |
化合物半導体を用いる磁気センサ素子として、InSbやGaAs等のIII-V族やII-VI族化合物がホール効果素子に利用されており、一方、強磁性金属を用いる磁気センサ素子として、Ni, Co, Fe等の遷移金属が磁気抵抗効果素子に応用されている。強磁性薄膜を用いた磁気抵抗効果素子はスパッタリング法等の真空プロセスにより製造され、膜面内方向に電流を流すことにより2%程度の磁気抵抗変化率を示すが、金属薄膜であるため抵抗値そのものが小さい。 そこで本研究では、製造コストの面で有利な、水溶液からの合金電析技術を応用し、Ni-MoおよびNi-W系非晶質合金をメンブレンフィルター等のナノポアー中に成長させ、強磁性非晶質合金ナノワイヤーを作製した。さらに、これを高感度磁気センサー用素子として利用するため、軟磁気特性を評価した。まず、定電位電解法により、Ni-MoおよびNi-W非晶質合金ナノワイヤーを作製した。この際、ナノポーラステンプレートを陰極に、Au電極を陽極にして、Ni^(2+)およびMoO^(2-)_3またはWO^(2-)_3を含有する硫酸酸性水溶液中で定電位電解を行い、Ni-MoおよびNi-W非晶質合金ナノワイヤーをテンプレート孔中に電析させた。次に、Ni-MoおよびNi-W非晶質合金ナノワイヤーの軟磁気特性を評価した。±10kOeの範囲で磁場をスイープし、磁気ヒステリシスループから保磁力を評価した。その結果、純Niに比べ、Ni-MoおよびNi-W非晶質合金では、保磁力を約100分の1程度にまで、減少させることができ、軟磁気特性を改善できた。
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